TAMARU MIYUKI.COM

笹屋伊織の女将塾「愛される所作~橙色の会 」
in 名鉄百貨店

日時
2017年10月19日(木曜日) 午後2時5分~午後3時00分
場所
名鉄百貨店本店本館9階バンケットルーム(名古屋市中村区名駅1-2-1)
今月のお菓子
「み月」と干菓子
ワンポイント講座
菓子木型

2017年度第7回目となる女将塾「愛される所作〜橙色の会」、20名超の参加者。聞くところによれば、定員20名のこの女将塾(3部制)、予約で満席となりキャンセル待ちとなることが少なくないそうだ。8年目の女将塾(スタート当初は「老舗女将のトークライブ」だった)、くさらず、嘆かず、諦めずに継続した結果だと思う。

今月のお菓子は「み月」と干菓子。一つ目の「み月」は、「栗羊羹に村雨を重ね、さりげなく金箔をあしらった」お菓子。夜空に浮かぶ満月が思い浮かぶ「み月」は、皇室の菩提寺である総本山御寺泉涌寺(みてら・せんにゅうじ)境内で、年内は11月18日〜12月3日の期間でしか購入することができないお菓子。JR東海の「そうだ京都、行こう」の2009年初秋のキャンペーンで紹介された泉涌寺のテレビCMのために特別に調整された「み月」は、泉涌寺の第154世長老の上村貞郎(ていろう)猊下(げいか)より御命名・御染筆を賜ったお菓子で、「み月」の「み」がひらがなになっているのは、美しい「美月」、月を観る「観月」、味わう「味月」、実りの「実月」、ますます栄える「弥月」、そして田丸先生(みゆき)の「み月」などいろいろな月を愛でていただくようにという思いが込められているからだそうだ。

「み月」についてのレクチャーが終わると、お抹茶と「み月」をいただく甘楽茶楽タイム〜。満月を連想させる色使いの村雨は、(火入れして水分を飛ばした)火取り餡に上用粉とみじん粉を合わせ、裏漉ししてそぼろ状にしたものを、さらに枠に入れて蒸し上げた多くの工程を経てできあがった生地。菓銘「み月」からしても、この村雨が主役だが、脇役の夜空に見立てた栗羊羹の存在を忘れてはならない。村雨と栗羊羹の食感、口どけなどの違いを楽しみながら、秋の代表的な和菓子の栗羊羹が脇役の「み月」をいただいた。

二つ目のお菓子は、菓子木型を使って成形された干菓子。今回いただいた干菓子は、写真ではわかりにくいかもしれないが、因幡の白兎をイメージした和三盆を使った打物。笹屋さんに残っている年代物の菓子木型の実物を見ながら、材質、種類などについてのレクチャーを受けた。江戸時代中期以降、菓子木型を使った干菓子が1960年頃まで流行したそうだ。食品の衛生管理、保存技術が発達した現在とは違い、日持ちがする水分含有率が少ない干菓子が重宝されたからだろう。しかし、結婚式の引き出物として干菓子が贈られることが少なくなる、和菓子の個別包装化が進むなど時代の変化とともに菓子木型が活躍する機会は少なくなったそうだ。

text:渡邉 和彦