TAMARU MIYUKI.COM

京菓子の美しいいただき方と和の美人度アップ講座
in 名鉄百貨店

日時
2017年3月15日
場所
名鉄百貨店本店本館9階バンケットルーム(名古屋市中村区名駅1-2-1)
今月のお菓子
桜餅と洲浜
ワンポイント講座
言葉美人

2016年度の最終回。一つ目の今月のお菓子は桜餅。小麦粉を使ったクレープ生地風の関東の桜餅(長明寺餅)と道明寺粉を使う京都の桜餅の違いについての説明が終わり、田丸先生が「塩漬けしてある桜餅の葉は食べられるけど、桜餅の葉を食べる人、手をあげて」と問うと、全員が挙手。多いだろうとは思ったけど全員とは、驚いた。

続いて、桜餅の美しい食べ方についてのレクチャー。葉を食べない場合は、桜の葉を折り返して下敷きとして使うと桜餅が懐紙にくっつかない。桜の葉を食べる場合は、葉脈の右横に黒文字を入れて切る。桜餅の左半分に残った葉脈は手で簡単に外すことができる。食べたら終わり、ではない。外した葉脈と黒文字を懐紙で包み後片付け。

2つ目のお菓子の洲浜は、浅煎りの大豆の粉を水飴で練り上げた生地のこと。洲浜は江戸時代、切り口が浜辺や入江をイメージした洲浜の形をした棹菓子のことだったが、今は生地のことも洲浜と呼んでいる。洲浜生地を使った「すはま団子」は、手で持って口に運んで食べるのではなく、黒文字を使って団子を一つずつ外しながら食べる美しい食べ方を学んだ。

今月のワンポイントレッスンは、言葉美人。田丸先生は、大手クレジットカード会社の女性スタッフの電話での応対を例に出し、どんなに丁寧な話し方でも、心がこもっていないマニュアル的な話し方では先方が伝えたいことがこちらには伝わらないと言う。その通りだ。あらゆる業種における「接客」で大事なことは相手を気分悪くさせないことだ。クレームの対応の時に、上から目線で一方通行的な話し方をされると本来のクレームとは別のクレームが発生することがある。逆に、低い目線で、こちらの気持ちになって真摯にクレーム対応されると、敬語の使い方が多少間違っていても、言葉足らずであったとしても、クレームが単なる苦情に終わることがある。「あなたがそこまで言ってくれるなら、もういいよ。また買うよ」。
さて、池波正太郎さんが書いたエッセイ「回転橋のおかみさん」を読むと、飲食店にとって「接客」がいかに重要なのかがよくわかる。池波さんの「このおかみさんの親切によって、うまいとはおもわなった料理までが、後々、忘れがたいものになるのだ」を言い換えると、「美味くない料理が上手い接客で美味くなる」である。さらに言い換えれば、「美味い料理でも拙い接客で不味くなる」である。このことは飲食店だけでなく、お客さまと接する機会があるすべての仕事にとって当てはまることだ。デパート、スーパー、コンビニ、クレジットカード会社、カーディーラー、ミュージアム、図書館、役所などなど、心がこもった「接客」が重要なのは飲食店と変わらないはずだ。

text:渡邉 和彦